“遠見の”クレアらの活躍により、“夢の王”の結界から脱出した生徒たちは、1人の脱落者を出すこともなく現実世界へと帰り着いた。
“運命改変者”レアン・クルセアードの手に落ちた、クレアとルーの2人を除いては。
結界の中へ取り残された2人を救出し、“夢の王”リジャーゼ・ストラウブを討ち果たさなければならない。
双樹会会長マイヤは、至急有志を募って図書館資料室に集めたのだった。
「それでは、簡単に本作戦を説明します」
集まった学生たちを前に、マイヤが腰の後ろで手を組みながら言葉を発した。
いつもの冷静沈着な会長らしくなく、その言葉の端には焦りの色が感じられる。
「本作戦の最終的な目的は以下の3つです。まず、最も優先すべきはクレア・エルグライド、並びにルチアル・ティンダーズ、2人の救出です。次いで、拉致者であるレアン・クルセアードの撃退。そして“夢の王”リジャーゼ・ストラウブの再封印です」
そこで言葉を切り、マイヤはエリスとフランの2人を前に呼び出して説明を続けた。
「夢の世界は、あくまで敵の領域。固まって行動しても、単独で行動しても、我々の行動は敵に筒抜けとなるでしょう。いずれにしろ危険が軽減されないのであれば、3つの目的を迅速に達成すべく、隊を3隊に分けたいと思います」
「“運命改変者”レアン・クルセアード。まだ詳しくは話せませんが、我々の同胞にして、この学園の卒業生である彼に対しては、エリスに当たってもらいます」
マイヤの言葉を受けて、エリスが軽く頷く。
「レアン・クルセアードは四大リエラの1つ、水のアークシェイルと交信する恐るべき難敵です。彼が何を企んでいるのかは分かりませんが、彼を打ち倒さないことには2人の救出すらままならないことは間違いありません」
「“夢の王”の再封印には、事情をよく知るフランに行ってもらいます。“夢の王”の本体がどこに隠れているか分かりませんが、現実世界から乗り込めばリエラの力が通じるはずです。見つけ出して、これを撃退して下さい」
「最後に、クレア・エルグライドとルチアル・ティンダーズの救出には、……僕が当たります。これは、レアン・クルセアードの動きと直接絡みますので、なるべくエリス隊と連動しつつ、器用に、そして素早く立ち回れる者の力が必要です」
マイヤは説明を終えると、数人の生徒に手伝ってもらい、注意書きの書かれた紙を生徒たちに配布したのだった……。
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