ネイとキックスの初心者向けデッキ講座

01:デッキって何?

キックス 「じゃ、最初はデッキについてだ」
ネイ 「ねぇねぇ、お兄ちゃん。デッキてなに? 甲板のこと?」
キックス 「あのなぁ……お兄ちゃんはやめてくれ」
ネイ 「じゃあ、お兄さん? それともお兄様?」
キックス 「そういう問題じゃないって。話が進まないから、無視するぞ。
 で、デッキについてだけど、スペルは同じ "deck"。でも、ここでの意味は1束のカードのことだ」
ネイ 「カードの束? このゲームにカードなんてないよ?」
キックス 「デッキ作成画面に行くと『発現した超常の力』とか、いくつかの技があるよな? これらの技をカードと同じと思えばいいんだ。
 数ある技のなかから自分のリエラに使わせたい技を選び出して……」
ネイ 「ちょっと待って」
キックス 「どうした?」
ネイ 「リエラって……なに?」
キックス 「……え、と……。さすがにフューリアは解るよな?」
ネイ 「なにそれ? 食べ物かなにかの名前? おいしいの?」
キックス 「…………」
ネイ 「あ、今、本気で呆れたでしょ?」
キックス 「呆れたくもなるって。神学基論で習わなかったか? リエラってのは、俺のロイズやお前のウィルの総称だよ」
ネイ 「みんなが呼び出してるヤツのこと? 総称なんてあったんだ」
キックス 「あったんだよ。
 で、このリエラを呼び出せる人のことを『優れたる人』、フューリアって呼ぶんだ」
ネイ 「へ〜、初めて知ったよ」
キックス 「初等部でも知ってることなんだけどなぁ」
ネイ 「知らなくても生きていけるからいいの。
 で、結局のところ、自分のリエラに使わせたい技を選び出して、まとめたものがデッキでいいのかな?」
キックス 「そういうことだけど……」
ネイ 「けど?」
キックス 「先が思いやられる」
ネイ 「ぼやかないの。がんばってね、先生」
キックス 「なんで俺、こんなことしてるんだろ……?」


02:DPって何?

ネイ 「じゃ、ワタシもデッキを作ってみよっと。
 え〜と、この『飛来の礫』って技がいいな。ダメージが135もあるし」

 飛来の礫
 地属性 攻撃技  DP:-7  消費精神力:30  移動:なし
 ダメージ(近/中/遠):135/135/0  相殺値(近/中/遠):11/9/0

 一顧だにされぬ屑や欠片も、ひとたび群れをなし宙を飛び交えば、恐るべき血の雨を降らす。

ネイ 「これをたくさん使えば勝利間違いなし! 4枚まで入れられるみたいだから4枚フルに入れちゃえ。
 他に強そうな技がないからこれだけでいいや、完成っと」
キックス 「……」
ネイ 「あれ? なんかエラーメッセージが出るよ。バグが残ってるゲームを公開しちゃダメじゃない」
キックス 「お前、バカか? よく見ろ。技の横に括弧付きで数字が書いてあるだろ? あと下の方に合計DPという欄がある」
ネイ 「ホントだ。え〜と、飛来の礫は −7で合計DPは−28だね。で、これがなにか意味あるの?」
キックス 「DPとはデッキポイントのことで、まぁ簡単に言えば技の値段みたいなものだ。
 基本的に、DPの絶対値が大きいほど技の効果も大きくなる。だけど、その分だけ大振りになるので、小技も入れた方がいい」
ネイ 「強攻撃だけじゃ勝てないってことね。じゃ、合計DPは?」
キックス 「合計DPはその名の通り、デッキ内にある技のDPの合計だ。同じ技を2枚3枚と入れるとDPも2倍3倍になる」
ネイ 「今の場合だとDP−7の飛来の礫を4枚入れたから、−7×4で合計DPが−28になったんだね」
キックス 「そういうこと。そして、デッキは合計DPが0以上になるように作らなくちゃいけない」
ネイ 「ということは、なにかDPがプラスの技を入れて合計DPを0以上にすればいいんだね?
 う〜ん、あまりいい技がないなぁ。仕方ない『地の理力』がまだマシかな……」

 地の理力
 地属性 補助技  DP:7  消費精神力:20  移動:なし
 自分の地属性を30増加させる

 そこから孵りそこへと還る、大いなる大地の理。それこそが真理。

ネイ 「これを4枚入れると合計DPは……−7×4+7×4=0、か。  これで合計DPが0以上になったからOK、と。デッキ完成!」


03:戦法ってなに?

キックス 「ついでに戦法を入れてみるといいんじゃねぇか?」
ネイ 「戦法って?」
キックス 「技一覧の下の方を見てみろ」
ネイ 「あ、戦法ってのがあるね。『序盤の秘策』とか『近距離の秘策』とか。で、どんな効果があるの?」
キックス 「ある条件を満たした時に、特定の技を使うように指定するのが戦法だ。例えば『序盤の秘策』」

 序盤の秘策
 5ターン目に特定の技を発動させます。

キックス 「戦法を入れていなかった場合、各ターンにどの技を使用するかはランダムに決まる。だから、入れる技の枚数を調整することで確率をある程度は操作できるが、確定できない。
 けど、『序盤の戦法』を選んでいた場合、5ターン目に指定した技を必ず使用するんだ」
ネイ 「ふーん。そうなんだ〜」
キックス 「で、どの技を指定すればいいかは選んだ戦法によって変わるので、いろいろ考えてみるといいぜ。『近距離の秘策』だと……」

 近距離の秘策
 相手との距離が近距離になったら特定の技を発動させます。

キックス 「って事だから、近距離のダメージが大きい技を指定するとかさ」
ネイ 「要は、たくさん使いたい技を指定すればいいんでしょ?」
キックス 「……お前、ちゃんと話を聞いてたか? まぁ、あながち間違っていないけどな」
ネイ 「もちろん『飛来の礫』をたくさん使いたいな。
 『飛来の礫』は近距離ダメージが大きいから……『近距離の秘策』で戦法に指定しよっと」
キックス 「戦法を使うに時には、気をつけなきゃいけないことが2つある」
ネイ 「な〜に? もったいぶらずに教えてよ」
キックス 「1つは、戦法の技に指定するためには、その技をデッキに入れておかなければならないこと。
 もう1つは、戦法にもDPが設定されていること。大抵の戦法のDPはマイナスだから、気をつけろよ」
ネイ 「あ、『近距離の秘策』ってDP−1だ……」
キックス 「1DPに笑うものは1DPに泣く、だな。ま、DPが0の戦法もあるから、それで我慢しろ」
ネイ 「DP0の戦法なら、別に入れなくてもいいんじゃないの?」
キックス 「戦法は入れても入れなくても問題はないけど、無駄になることはあんまりないし、入れておいて損はないよ」
ネイ 「取りあえず入れておけってことね。じゃあ、『攻勢の秘策』を入れよっと」

 攻勢の秘策
 相手のリエラの耐久力が50%以下になったら特定の技を発動させます。

ネイ 「指定する技は当然『飛来の礫』ね」
キックス 「デッキができたら、トレーニングしてみるといいぞ」
ネイ 「デッキがデキたらって……それシャレ?」
キックス 「……殴られたいか?
 デッキが組めたからといって、それで完成ってワケじゃない。実際に戦ってみると、弱点や欠点が見えてくることもある」
ネイ 「そういうもんかなぁ……。じゃ、折角だし、戦ってくるね」

 (しばらくして……)

ネイ 「うわ〜ん、キクえも〜ん!」
キックス 「誰がキクえもんだよ、誰が!」
ネイ 「“遠ざかる水音の”ルネにイヂめられたよ〜」
キックス 「もっと具体的に言えよ」
ネイ 「リエラの耐久力を0にされた」
キックス 「あー、完ッ璧に負けだな」
ネイ 「うわっ。ストレートに言うなぁ。慰めの言葉の1つもかけられないの?」
キックス 「かけられない。そんなこと言う暇があるなら、負けた理由でも考えろよ」
ネイ 「『近距離の秘策』が使えればなぁ……。じゃあ『地の理力』の代わりに『大地の祝福』を入れて……」
キックス 「しばらくはそんな風にいろいろと試してみるんだな」


04:耐久力・精神力・体力って?

ネイ 「うわ〜ん、きーちゃん〜〜」
キックス 「今度は何だよ?」
ネイ 「あれ? 『きーちゃん』にはツッコまないの?」
キックス 「……ツッコむ気力もねぇよ。で、何だよ?」
ネイ 「そうそう。“襲う疲労の”バナールに負けたんだけど、なんで負けたか解らないの。リエラの耐久力はちゃんと残ってたのに……」
キックス 「ああ、お前ヘトヘトになってるだろ?」
ネイ 「そうなの。最後の方はもうクタクタで……。がんばって戦い続けたんだけど、途中でダウンしちゃった。気付いたら保健室のベッドの上だったの」
キックス 「試合に勝つには方法が2つあるんだ。1つはリエラを倒す。もう1つは……」
ネイ 「フューリアを倒す?」
キックス 「そう言う事。
 リエラを使役するにはフューリアの力が必要になる。そのフューリアが体力切れでダウンすると、自動的にリエラもダウンすることになるんだ」
ネイ 「大したことない攻撃だと思ってたけど、あれはワタシを狙っていたんだ……姑息だよ!」
キックス 「フューリアを狙うのも、ちゃんとした戦法だ。
 あと、最初のうちは自分の体力を把握しきれずに自滅することもあるから、注意しろよ」
ネイ 「どういうこと?」
キックス 「リエラに技を使わせるとフューリアの精神力が削れていく。どの技にも消費精神力が設定されてるだろ?」
ネイ 「あ、ほんとだ。じゃあじゃあ、精神力がなくなったら技が使えなくなるの?」
キックス 「いちおう技は使える。精神力がなくなっても体力で代用できるんだ。でも、体力だっていつまでも保つワケじゃない」
ネイ 「ゲームに例えるなら、MPがなくなってもHPで代用できる。HPもなくなるとフューリアがダウンするってことかぁ」
キックス 「体力を消費して技を使うのは、命を削ってるようなもんだ。だから自滅って言ったわけ」
ネイ 「じゃあ、長期戦にならないように気をつけないと」
キックス 「リエラの耐久力やフューリアの精神力・体力を回復させる技もあるから、バランスを考えて入れておくといいぞ」
ネイ 「難しそうだなぁ。短期で片が付くように、強い技をたくさん入れた方が簡単そう」
キックス 「大技を連発してるとすぐにバテて自爆するぞ。自爆する前に絶対に勝てるっていう自信はあるのか?」
ネイ 「もちろん!」
キックス 「その根拠のない自信は、どこから出てくるんだ……?」
ネイ 「だって今度は正々堂々と闇討ちするもん」
キックス 「お前なぁ……」


05:攻撃力・防御力って?

ネイ 「キックスキックスキックス〜〜」
キックス 「騒がしいヤツだなぁ。で? 今度はなんだよ?」
ネイ 「デッキを弄ってる時に気付いたんだけど、右側にある英数字はなんなの? フューリアの欄の体力・精神力・レベルは数字で書いてあるから解るんだけど、リエラの方はアルファベットだけで意味不明だよ」
キックス 「お前、そんなことも知らずに戦ってたのかよ。ったく。順番に説明してやるよ。長くなるけど、寝ないでちゃんと聞いておけよ?」
ネイ 「OKOK〜」
キックス 「……いまいち信じられねぇけど……。
 まずはアルファベットの説明から。これは、リエラがその分野で優秀なのか劣っているのか、それとも普通かどうかを示している。
 アルファベットはA〜Eまであって、Aに近いほど優れてるってこと」
ネイ 「てことは、Cが普通でEに近いほどダメダメってこと?」
キックス 「そういうこと。
 Aを越えるSや、さらにその上をいくSS・SSSがあるらしいけど……この辺は噂や伝説レベルの話でしか聞いたことがない」
ネイ 「あ、伝説の四大リエラのことでしょ?」
キックス 「よく知ってたな。ま、その程度の信憑性しかないから真に受けないことだな。
 エリス先輩のアルムが、四大リエラの1つ。焼き尽くす炎のアルムらしいけど」
ネイ 「にしし。噂話はワタシの生き甲斐よ。でも、今は現実のリエラの話をしようよ」
キックス 「だな。お前が噂話をすると、ずーっと話し続けてるからな」
ネイ 「で、ワタシのリエラは攻撃力がAで防御力がBだから、攻撃が得意で防御がちょっと良い感じってことだね?」
キックス 「そう言う事だな。
 同じ技でも攻撃力が高いほど与えるダメージは大きくなって、防御力が高いと食らうダメージは小さくなる。
 逆に攻撃力が低いと与えるダメージは小さくなり、防御力が低いと食らうダメージは大きくなる」
ネイ 「そのまんまだなぁ」
キックス 「それを解らなかったお前はなんなんだ?」
ネイ 「まぁまぁ。仕方ないじゃない。アルファベットじゃなくて数字で書いてあったらワタシだって解ったよ」
キックス 「まぁ、そう言うな。このゲームの仕様なんだからあきらめろ。すぐに慣れるさ」


06:格って?

ネイ 「耐久力もそのまんまとして……格ってなに?」
キックス 「そのまんまだよ。格上とか格下とか言うだろ? その『格』のことだよ」
ネイ 「攻撃力・防御力・耐久力の総合評価みたいなもの?」
キックス 「そんなところかな。格上の攻撃を食らうとそれだけで体力を消耗するから、格上と戦う時はいつも以上に体力の管理に気をつけなければならない」
ネイ 「プレッシャーを感じるワケね」
キックス 「大会にでも出ない限りはそうそう格上と当たることはないけど、覚えておいて損はないから忘れるなよ」
ネイ 「は〜い」
キックス 「ちなみに、格上の攻撃を食らうことによって削られる体力のことを、『格ダメージ』って言う」
ネイ 「それも覚えておかないとダメ? テストに出る?」
キックス 「覚えておいた方がいいけど、ムリしなくても自然と覚えるよ」
ネイ 「じゃあ、がんばって覚えなくてもいいんだ」
キックス 「そうは言ってないんだけどなぁ」


07:属性ってなに?

キックス 「次に、属性についてだけど……」
ネイ 「分かった。そのリエラがどの属性の技を得意としているか、または苦手としているかってことでしょ?」
キックス 「お前も解ってきたようだな。じゃあ、得意な属性の技を使うと、どうなると思う?」
ネイ 「え、え〜と……与えるダメージが大きくなる?」
キックス 「間違ってないけど、正確じゃないな」
ネイ 「え? どういうこと?」
キックス 「正解は、『クリティカルの発生率が高くなる』」
ネイ 「ほえ?」
キックス 「クリティカルが発生するとその時に与えるダメージが大きくなる。
 そしてクリティカル発生率が高くなると、平均的に見て与えるダメージが大きくなるって事」
ネイ 「あ、会心の一撃を連発するモンクみたいなもんか」
キックス 「マニアックな例えだな……。ま、それはともかく、ここで発展問題。属性が低いとどうなる?」
ネイ 「くー……zzz」
キックス 「いきなり寝るな」
ネイ 「もぅ、わがままなんだから〜。えっと、さっきとは逆なんだから……ファンブルの発生率が高くなる?」
キックス 「正解。なら応用問題。攻撃を食らった場合、属性の高低はどう関係してくるか」
ネイ 「え〜と。得意な属性の攻撃を食らった場合は……敵のファンブル発生率が上がるのかな?」
キックス 「苦手な属性の攻撃を食らうと?」
ネイ 「敵のクリティカル発生率が上がる……?」
キックス 「そう言う事だ。まとめるとこうなる。
 攻撃的にいくなら攻撃に使う技の属性を決める。そして、その属性を自分のは上げて敵のは下げる」
ネイ 「防御的にいくなら敵の使う技の属性を見切る。で、その属性を自分のは上げて敵のは下げるって事ね?」
キックス 「大正解。いつもそれぐらいの応用力があればな」
ネイ 「素直に誉められないの? だから彼女ができないんだよ」
キックス 「う、うるさいなぁ。おまえはどうなんだ」
ネイ 「それこそほっといてよ」


08:距離ってどういうこと?

ネイ 「最近、気付いたんだけど……勝てる相手と負ける相手ってだいたい決まってない? これって属性の相性問題?」
キックス 「それもあるけど、デッキの相性問題じゃないか?」
ネイ 「デッキの? それって入れてる技の属性の相性ってこと?」
キックス 「違う違う。例えば……ちょっとお前のデッキを見せてみろ」
ネイ 「いいよ。ほいっ」
キックス 「相変わらず『飛来の礫』がメインか。
 技のデータをよく見てみろ。近距離と中距離のダメージは135だけど、遠距離のダメージは0だろ?」
ネイ 「あ、ホントだ。なんか途中から当たらないなぁと思ってたんだけど、外れてたんじゃなくて届いてなかったんだ」
キックス 「そういうこと。中には近すぎて当たらない技とか、台風の目みたいに中距離では当たらない技とかもある」
ネイ 「改めて見てみると、どの技も一長一短だなぁ。遠距離でもダメージを与える技も一緒に入れた方がいいのかな?」
キックス 「それよりも移動技を入れた方がいいぞ?」
ネイ 「移動技? ええ〜と……そんな技ないよ?」
キックス 「ああ、言い方が悪かった。移動技ってのは、使うと移動する技の事なんだ。  お前の覚えている技だと……例えば『石弾の嵐』かな」

 石弾の嵐
 地属性 攻撃技  DP:-8  消費精神力:30  移動:後退1
 ダメージ(近/中/遠):0/135/135  相殺値(近/中/遠):0/6/7

 風もなく水もない嵐が、鉱物に特有の無慈悲をもって、砕き、叩き、打ちのめす。

キックス 「技のデータの中に『移動:後退1』ってあるだろ? この技を使うと、攻撃すると同時にこの技の得意な遠距離へと移動していくんだ」
ネイ 「“遠ざかる水音の”ルネのヤツ、いつの間にか離れていくなぁと思ったら、攻撃しながら移動してたんだ」
キックス 「ダメージを落とすことで移動に専念してる技もある。え〜と、『うねる大地・1』なんか、いい例だな」

 うねる大地・1
 地属性 攻撃技  DP:-8  消費精神力:20  移動:前進3
 ダメージ(近/中/遠):0/0/0  相殺値(近/中/遠):12/10/8

 地は独特の緊張に蠕動し、あらゆる物が主の為に道を譲る。

ネイ 「攻撃できない代わりに、自分に有利なポジションに移動しやすくなるってことね」


09:設置技ってなに?

キックス 「あと、設置技のなかにも移動する技があるぞ」
ネイ 「ね〜、キックス〜〜。設置技ってなに?」
キックス 「少しは自分で考えたらどうだ?」
ネイ 「そんなつれないこと言わないでよ〜」
キックス 「『獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす』だ」
ネイ 「あーっ!? 諺や古語・死語は、ワタシの十八番なのに〜。ワタシの出番取った〜」
キックス 「しらねぇよ。あと、『かわいい子には旅をさせよ』とも言うな」
ネイ 「キックスってワタシのお父さんだったんだ! ダディって呼んでもいい?」
キックス 「……帰る」
ネイ 「ちょっとした冗談だったのにぃ……ってホントに帰ってる!? 仕方ない、自分で考えるかぁ」

 (ネイ、しばし考える)

ネイ 「え〜と、攻撃技は……攻撃する技だよね。ダメージを与える技しかないし。
 補助技は補助する技……だよね。移動とか回復とかステータスアップとか、いかにも補助っぽいし。
 てことは、設置技は設置する技……か」

 (ネイ、更に考える)

ネイ 「…………何を設置するんだろ? 落とし穴みたいなものかな? この『蛮勇の陥穽』とか、いかにも落とし穴っぽいし」

 蛮勇の陥穽
 地属性 設置技  DP:-7  消費精神力:48  移動:なし
 近距離になったら/ダメージ160で攻撃を行う

 勇み足のその先には、深くて暗い落とし穴が待ち受けているものである。

ネイ 「この『近距離になったら』っていうのは戦法に似てるなぁ。
 てことは、設置技ってのは予め設置しておいて、条件が満たされた時にまとめて発動させるのか〜」

 (ネイ、何かに気づく)

ネイ 「……ん? 設置技は攻撃用だけじゃないんだ。この『白刃の坂』なんて、移動用なんだから補助技の設置版みたいだし」

 白刃の坂
 地属性 設置技  DP:-4  消費精神力:26  移動:なし
 中距離になったら/相手を2前進させる

 坂を登り切ろうかという時に突然鋭い岩が足を傷つけるなら、それは大地に嫌われた証拠である。

ネイ 「この2つを組み合わせると面白いかも。地雷原に突き飛ばして連鎖爆発させるカンジかな……あっ!」
ネイ (にしし。いいこと思いついた。今日の仕返しにキックスの部屋の前に仕掛けておいてやろっと)

(註:実際は、学園内では特命がない限り、闘技場以外でリエラに『技』を使用させることを固く禁じています。良い子は真似しないでネ)


10:デッキの枚数は?

ネイ 「そう言えばさ。同じ技は4枚までって決まってるみたいだけど、デッキの総枚数は決まってないよね」
キックス 「決まってるぞ?」
ネイ 「え、ウソ。何枚なの?」
キックス 「60枚」
ネイ 「60枚か〜〜。やっぱり、上限いっぱいまで入れた方が強いのかな?」
キックス 「いや、そうでもないな。デッキの総枚数が多いってことは、特定の技を使う確率が低いってことだからな」
ネイ 「それって前に言ってた『各ターンにどの技を使用するかはランダムに決定される』ってヤツ?」
キックス 「お前、たまに物覚えがいいな。このゲームでは『その技の枚数÷デッキの総枚数』でその技を使う確率が決まるんだ」
ネイ 「だから『入れる技の枚数を調整することで、確率をある程度は操作できる』って言ってたんだ。納得、納得」
キックス 「解ってきたようだな。じゃ、デッキの枚数はどうしたらいいか解るよな?」
ネイ 「使いたい技を多くして、デッキの総枚数を少なくする、でいいのかな?」
キックス 「正解。ま、そこにDPが絡んでくるから簡単にはいかないんだけどな」


11:相殺ってなに?

ネイ 「う〜ん」
キックス 「なんだ? 毎日の様にみんなからサラダをたかってるから、腹でも下ったのか?」
ネイ 「失礼しちゃうなぁ。しかもデリカシーの欠片もない。少し考え事をしてたんだよ」
キックス 「考え事? 珍しいな。で、何を考えていたんだ?」
ネイ 「移動しようとするとダメージが減るでしょ? 設置技も試してみたけど、攻撃とは別に移動する必要があるし」
キックス 「ま、そうだな」
ネイ 「だったら全距離に攻撃できる技を使えば強いんじゃないかなって」
キックス 「間違ってるワケじゃないけど、最初のウチはあまり勧められないな」
ネイ 「どうして?」
キックス 「例えば『天嶺の水龍』という技がある」

 天嶺の水龍
 水属性 攻撃技  DP:-6  消費精神力:77  移動:なし
 ダメージ(近/中/遠):122/174/122  相殺値(近/中/遠):5/8/5

 水は蛇に似る。うねり、のたくり、とぐろを巻き、天に昇って龍となる。

ネイ 「なに、この技? 全距離でダメージが100を越えてるじゃない。DPも−6っていいカンジだし」
キックス 「全部のデータをよく見てみろよ。相殺値という項目があるだろ?」
ネイ 「そういえば、前から気になってたけど、相殺値って何?」
キックス 「……ってことは、相殺が何かも理解してないだろ?」
ネイ 「当然でしょ。えっへん!」
キックス 「威張るなよ。ともかく、両者が同じターンに攻撃技を撃ったとしたら、そこに相殺が起きる」
ネイ 「ふむふむ」
キックス 「で、この時起きる相殺は、両者の使った技の属性によって3種類に分類される。
 両者の使った技が同じ属性の場合は、同属性相殺。
 反対の属性の場合は反属性相殺、それ以外の場合は異属性相殺だ。
 で、それぞれの場合で……」
ネイ 「あの〜……」
キックス 「なんだ? まだ話の途中だぞ?」
ネイ 「その話の途中で悪いんだけど、反属性ってなに? 同属性と異属性は解るんだけど……」
キックス 「あれ? 属性の話をした時に言わなかったっけ?」
ネイ 「聞いてないと思うけど……たぶん」
キックス 「7つある属性のうち、地と風、水と火、光と闇は相反する性質を持つから反属性と呼ばれてる。つまり、地の反属性は風、闇の反属性は光って言う風に言うんだ」
ネイ 「無属性は?」
キックス 「無属性には同属性や反属性がなく、異属性相殺しか起こさない。
 あと、最近の研究によると、異属性がなく、同属性相殺か反属性相殺しか起こさない8つ目の属性の存在が確認されたらしい」
ネイ 「ややこしい話はパスパス。あとで噂話聞いとくから。
 で、相殺値ってどう関係してくるの? もったいぶらずにさっさと話してよ」
キックス 「それを話そうとしてて腰を折られたんだけど……ま、いっか。
 異属性相殺が起きた場合、相殺値が勝っていた技が打ち勝つ。
 そして勝った側はいつも通りにダメージを与え、負けた側はダメージを与えられない」
ネイ 「要は相殺値で負けてた方の技が潰されるってことね」
キックス 「そう。同属性相殺が起きた場合も、相殺値が勝っていた技が打ち勝つ。
 そして負けた側は2つ分の技のダメージをまとめて食らってしまう」
ネイ 「自分の技の分のダメージまで跳ね返ってくるのか〜。気をつけないと大ダメージを食らいそう。
 で、最後の反属性相殺はどうなるの?」
キックス 「反属性相殺の場合、少しややこしいんだ。互いの技が打ち消しあってダメージが減ることになる」
ネイ 「えっと、具体的には……?」
キックス 「相殺値で勝った方の技のダメージから、負けた方の技のダメージを差っ引いたダメージが、負けた方に行くんだ。
 だから、相殺値で勝っていてもダメージで負けていれば、ダメージを与えられないこともある。
 けど、逆に言えば相殺値で負けていても食らうダメージは減っているから、安心と言えば安心だな」
ネイ 「大ダメージを食らうリスクを負ってでも大ダメージを狙うなら同属性。
 大ダメージを与えられないけど大ダメージを食らいたくないなら反属性。
 普通にいくなら異属性……って事でいいのかな?」
キックス 「相手が使ってくる技の属性が判るならな。何にせよ相殺値の高い技を使うに越したことはないってこと」
ネイ 「あ、それが最初の話に繋がるのか。全距離に攻撃ができる技は、相殺値が低いってことなのね」
キックス 「よく解ったな。相殺値が高い技もあるにはあるけど、その場合はダメージが低いかDPが高いかのどちらかだ」
ネイ 「そうそう美味い話は転がってないってことかぁ。濡れ手で粟とは行かないのねぇ」


12:はじめてのデッキはどういうのがいいの?

ネイ 「そういえば、さっき『最初のウチはあまり勧められない』って言ってたけどさ。それって相殺値は高い方がいいって話と矛盾してない?
 後になれば、相殺値が低くても良いの?」
キックス 「少し考えれば解るんだけどな。
 相殺値の低い技はDPが低い事が多い。つまり手数を増やすことができる。
 敵の攻撃に耐えるだけの防御力と耐久力、敵を倒すだけの攻撃力と属性値があれば、手数を増やすというのも戦法としてありえるってこと」
ネイ 「肉を切らせて骨を断つ、てことか。それなら確かに最初のウチはできないなぁ。ケガするのもヤだし。
 なら、初めのウチはどんなデッキがいいの?」
キックス 「単純な前進デッキか後退デッキがいいんじゃないかな」
ネイ 「えっと、近距離か遠距離に狙いをしぼれってこと? それだと逆の距離に逃げられたらボロ負けしない?」
キックス 「そうならないように、選んだ距離に移動する技を多めに入れておけばいい。十分な移動力があれば、最悪でも中距離での競り合いで済むハズだしな」
ネイ 「あ、だから中途半端にせずに、近距離か遠距離に狙いをしぼるのね」
キックス 「そういうこと。前にも言ったように、移動力を上げるとダメージが減るので、その辺のバランスはよく考える必要があるな。
 ま、その辺を調整するのも楽しみの1つなんだけどね」
ネイ 「でも相手が近距離を狙っているか遠距離を狙っているか解らないから、調整しようがないんじゃないの?」
キックス 「確定はできないけど、ある程度の流行というものがある。
 近距離デッキが増えてきたら前進力を落としてダメージを増やした方がいいだろ?
 で、全体的に前進力が落ちたのなら遠距離デッキの方がいい。
 遠距離デッキが増えてきたら後退力を落として……と、こんなカンジだ。
 今の流行を読んだ上でその先を行くと勝ちやすくなる」
ネイ 「えっと、メタゲーム……ってヤツだっけ? そんなの簡単に判るものなの?」
キックス 「新しく見つかった技や大会に優勝したデッキを見ると、ある程度は予測できる。あとは普段の模擬戦やトレーニングも情報源になるな。
 ま、1番手っ取り早いのは、人の集まってる場所に行って話を聞くことかな」
ネイ 「交流は大切ってことね。でさぁ、キックスぅ」
キックス 「な、なんだよ? 急に猫撫で声なんかだして」
ネイ 「今は近距離デッキと遠距離デッキのどっちがいいの?」
キックス 「人に聞く前に、少しは自分で調べろよ!」


13:はじめてのデッキにはどんな技を使うといいの?

ネイ 「ならさ、せめてどんな技を使えばいいのかぐらい教えてよ」
キックス 「あー、選択基準ぐらいは教えてやっから、後は自分で考えろよ」
ネイ 「けち〜」
キックス 「これだって、今までの話を聞いていれば解るハズなんだけどなぁ」
ネイ 「ってことは、ダメージとDPと移動力と相殺値?」
キックス 「あとは属性だな」
ネイ 「それって結局、ほとんど全部のデータじゃない!」
キックス 「取りあえずは移動力のある技を選ぶといい。それから相殺値とダメージ。DPは最後かな。満足のいくモノだったらそのまま採用。不満なら条件をもう少し緩くしてみるんだな」
ネイ 「でも、そんなに覚えてる技の数ないよ?」
キックス 「最初のウチは、贅沢言えないもんだよ」
ネイ 「あ。それと、補助技は?」
キックス 「DPが6〜8あたりのモノで効果が気に入ったモノを使うのが安全かな。
 それ以上だと、効果よりもリスクの高いものが増えてくるからよく考えて使った方がいい。お前みたいな何も考えないヤツにはお勧めできねぇな。
 あとは状況次第で回復技を入れるぐらいかな」
ネイ 「設置技は?」
キックス 「お前、本気で考える気なしだな……。少し考えれば解るんだから、少しは考えろよ」
ネイ 「そんなすぐに解る程度のことだったら、教えてくれてもいいじゃない。キックスのオニ〜アクマ〜オニヒトデ〜〜」
キックス 「オニヒトデって何だよ。解ったから、そのわけわかんない抗議はやめろ。
 DPがプラスのモノは補助技と似たようなもんだ。だから、似たような使い方が出来る。
 DPがマイナスのモノを使うと普通とはかなり異なるデッキになるから、最初のウチは使わない方が安全だろうな」
ネイ 「慣れてきたら、調整をしながら入れるって訳だね」
キックス 「そういうこと。いつもそう言う風に物わかりが良ければ、俺も苦労しないんだけどな」
ネイ 「最後まで素直に誉められないのね……」